高齢者雇用にともなう具体的なリスク・課題とは?
- 株式会社メディアラート
- 12月4日
- 読了時間: 8分

~健康管理・労災対策・コスト増をどう防ぐ?~
こんにちは、メディアラート広報です。前回の記事では、高齢者雇用安定法の背景や、65歳までの雇用継続についてをお話ししました。今回のテーマは、実際に 高齢労働者を受け入れるときに起こりがちなリスクについてお話しさせていただきます。
1. 法制度の背景とポイント ←前回記事はコチラ
2. 実際に起こりうるリスクや課題
3. 対策・活用できる制度や最新技術
法律の概要だけでは見えてこない、“現場レベル”での課題を掘り下げていきます。
なぜ高齢労働者の健康リスクが増えるのか?
どんな労災事故が発生しやすい?
企業にとってのコスト負担は?
こうした疑問や不安を具体的に整理し、次回の「対策・解決策」につなげていきます。
1.高齢労働者の健康リスク

1-1.ロコモティブシンドローム(ロコモ)
まず押さえておきたいのが、ロコモティブシンドローム(通称“ロコモ”)という言葉です。これは、加齢などによって骨・関節・筋肉などの運動器が衰え、日常生活に支障をきたす状態を指します。ロコモが進行すると、
転倒や骨折 のリスクが急上昇
作業現場で長時間立っていると、膝や腰に大きな負担
となることが多く、結果として 休職や離職 につながりかねません。とくに製造業や建設業などでは、足場が悪い場所での立ち作業や、重い荷物を運ぶ作業が多いですよね。ロコモの症状を抱える従業員が増えると、業務効率が落ちるだけでなく労災事故の発生率も上がる可能性があります。
ロコモティブシンドロームの国内の推計患者数は、 予備軍を含めて 4,700万人と言われており、他人ごとではありません。
ロコモかどうか簡易自己チェック項目も存在しますので、社内で簡単に測定イベントを開いてみるのも手かもしれません。
1-2.生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症)
次に、高齢者の健康トラブルで最も多いのが生活習慣病。糖尿病や高血圧、脂質異常症は、自覚症状が薄いまま進行することが多く、「元気そうに見えても実は体調を崩しやすい」というケースも少なくありません。
低血糖ショック:インスリン注射や血糖降下薬を使っている従業員が、食事タイミングを誤ると起こりやすい
急な血圧変動:高血圧の薬を飲んでいる方が気温差やストレスで血圧スパイクを起こし、めまいやふらつきを訴える
こうした症状が就業中に起きると、転倒事故へ直結したり、周囲の作業にも支障が出るリスクが高まります。
1-3.ポリファーマシー(多剤併用)
また、複数の医療機関に通院している高齢者が増えているのも見逃せません。異なる病院で処方された薬を重複して飲んでいる状態、いわゆる“ポリファーマシー”が進むと、副作用のリスクがアップします。
血圧を急激に下げる薬
眠気を誘発する薬
利尿剤や心拍数を抑える薬
これらが同時処方されていることもあり、従業員本人が何の薬をどのくらい服用しているか把握しきれていないケースも。“なんだか調子が悪いけど原因が分からない”という状況が続くと、業務パフォーマンスにも影響が出やすいので、服薬状況の確認や産業医との連携が大切です。
2.転倒事故や労災発生リスク

2-1.就業中の脳梗塞・心筋梗塞
生活習慣病が進行すると、血管系のトラブル(脳梗塞、心筋梗塞など)を発症する恐れがあります。もし就業時間中や通勤途中に起こった場合、労災認定となる可能性も。
企業としては、
業務負荷が高すぎなかったか
長時間労働や夜勤は大丈夫か
健康診断後のフォローアップはどうしていたか
などを問われるケースがあり、予防策を講じていないと「安全配慮義務を怠った」とみなされかねません。
2-2.転倒・骨折事故
高齢者の労働災害で特に多いのが、段差や滑りやすい床での転倒事故です。
若いころなら踏みとどまれたような状況でも、
足腰の筋力低下
視力や聴力の衰え
注意力の減少
などが重なると、一気に重症化するかもしれません。骨折で長期離脱になったり、そのまま要介護状態に陥るリスクも考えられます。

事例:ある工場では、ちょっとした段差で70歳近い従業員が転倒→大腿骨を骨折。生産ラインが止まり、代替要員を探したものの即戦力が見つからず、納期遅れとクレーム対応に追われた…という事例がありました。
2-3.腰痛・関節痛による作業効率の低下
長年の肉体労働や姿勢の悪化で、腰や膝に痛みを抱える高齢労働者は少なくありません。
中腰や屈伸が多い業務だと痛みが増してしまい、結局は
欠勤や退職
生産性の低下
周りの従業員への負担増
という悪循環が起きがちです。体力的に難しい工程は早めに配置転換するなど、作業割り振りの工夫が必要になります。

3.企業コスト・管理負担の増大

3-1.医療費・保険料負担
高齢者の労災事故や病気が増えれば、健康保険組合や労災保険の保険料率が上昇する可能性もあります。とくに重症化して長期休業となると、その補償費用や代替要員確保のコストがかさみ、会社の経営を圧迫することが…。
休職が長引く→離職→新たな求人費
教育・引継ぎにかかる人的リソース
など、“見えにくいコスト”が徐々に増大してしまう点は見逃せません。
3-2.生産性低下・業務効率の悪化
通院・服薬管理が必要だったり、体調を崩しやすい従業員が増えるほど、勤務スケジュールの調整や代行体制の手配が複雑化します。管理者がその都度対応に追われ、本来やるべき業務に集中できなくなることもしばしばです。
結果として、
納期遅延やクオリティ低下
他の従業員へのしわ寄せ
職場全体のモチベーションダウン
という形で、じわじわと生産性を下げる要因になります。
3-3.管理者の負担増
高齢社員ごとに健康状況はまったく違うため、個別フォローが必須になりがち。
シフトや業務量、体調に合わせた柔軟な運用は理想的ですが、管理者の作業量が倍増してしまうリスクもあります。
若手から「高齢の方だけ優遇されて不公平じゃない?」と不満が出ることもあり、社内コミュニケーションの調整がさらに大変になるのです。
4.増加する「働く高年齢者」の労働災害

働く人の5人に1人、労災死傷者数の30%弱が60歳以上
60歳以上の働く人は2003年段階では雇用者全体の10%を下回っていましたが、その後20年かけて緩やかに上昇し、2022年には18.4%と、ほぼ5人に1人となりました。それに伴い、労働災害(以下、労災)による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合も増加。20年前には15%だった比率が30%近くへと倍増しています。
事例1:転倒事故が連続
60代後半の従業員が小さな段差につまずき、骨折で3カ月離脱。さらに同じ部署で2カ月後に類似事故が起こり、労基署から是正指導を受ける羽目に。工場のイメージも悪化し、地元からの応募数が減少した。
事例2:心筋梗塞で救急搬送
内勤業務でも長時間座ったままのデスクワークが続き、70歳の従業員が急に胸の痛みを訴えて倒れ、救急車で搬送。結果的に労災認定となり、「慢性的な残業があったのでは」として対外的な批判も受けた。
事例3:腰痛・関節痛で離職者が相次ぐ
流れ作業で多くの立ち仕事を課していたところ、数名の高齢従業員が腰痛・膝痛を悪化させて離職。補充が追いつかず、現場の若手に過重労働がのしかかり、結局若手の離職も誘発してしまった。
5.まとめ・次回予告
高齢者雇用安定法が進む中、企業にとって高齢者雇用で人材を活かすというのは大きなチャンスではあります。しかし、ロコモティブシンドロームや生活習慣病、転倒事故、重大疾患のリスクなど、現場には深刻な課題が山積です。
事故や体調不良が起きれば、
コスト負担
生産性低下
管理業務の増加
といった問題が一気に表面化するかもしれません。
次回(第3回)では、こうしたリスクへの対策を詳しく取り上げます。国や自治体の補助金の活用方法、転倒リスク評価などの先端技術、職場環境の見直しポイントなど、「今日からできる具体策」をピックアップする予定です。

「実際にどうやって予防するの?」と気になる方は、ぜひ次回もチェックしてくださいね!

<メディアラートのサービスのご紹介>
高齢者雇用における健康管理をトータルサポート
メディアラートは、高齢労働者の健康管理と安全確保をサポートする各種サービスを提供しています。
1. 適正服薬事業
おくすり通信簿による服薬状況の見える化
ポリファーマシー(多剤服用)対策
医療費適正化と従業員の健康維持を両立
2. データヘルス計画
健康データの分析と活用
エビデンスに基づいた効果的な健康施策の立案
PDCAサイクルによる継続的な改善
3. 転倒予防対策
高齢労働者の転倒リスク評価
職場環境の安全性向上支援
事故防止のための具体的施策提案
高齢者雇用時代を迎え、従業員の健康管理はますます重要になっています。メディアラートは、企業様の課題に合わせたカスタマイズソリューションをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

